2012年7月31日火曜日

第一回KAMEの翼プロジェクト開始!


7月28日から始まったアゴラ子ども美術工場のキャンプよりKAMEの翼プロジェクトが動き出した。
第1回のプロジェクトの制作者に選考された加藤さんと大見さんは、28日夕方よりキャンプに加わった。
キャンプは一日目は7月28日9時30分〜29日9時。二日目は29日9時30分〜30日9時。スケジュールは、朝から三時まで、制作活動。
小学一年生から六年生の子どもたちが制作をする。
初めてキャンプに参加する子どもたちは、必ず食卓椅子を作る。その次の年からは、サンポーニャ、ケーナ、カメラオブスキュラ、木琴、バンダナ、スリットドラム、ステンドボックス等を作る。
この制作物はこのアゴラの主催者の渋垂氏が独自の発想で、考案した作品である。
子どもたちが自分で作れる事。そしてちゃんと使える。そして面白いものを思考した。
小学一年生から自分が座る椅子を作る。この醍醐味を味わう。
今年は滋賀からも2人小学1年生と4年生の子どもたちが参加した。
初めて使う金槌、ノコギリ、・・・作れるかな・・・どうかな・・・そこをサポートする加藤さん。ここを合わせて、ここに釘をうって・・・
大見さんは、カメラオブスキュラを担当。今年は小学5年生のR君と六年のAちゃん。
うまく作れたかな。
他にアゴラの中学生が小学生をサポートします。優しさがここにあります。
そうそう、光のアーティストの高橋匡太さんもこのキャンプに参加した。
高橋さんは二日目のお昼から加わった。
木琴は今年で6年目のイラストレーターの丸山氏が担当。木琴おじさんは今年も健在!




三時過ぎにカメパオで里山散策。
アゴラのカメパオは15年前にカメパオプロジェクトをやった時に作成されたもの。
制作者は京都市立芸術大学の中原浩大氏と黄瀬剛氏と渋垂氏。
カメパオはずっと子どもたちを乗せて月日を刻んだ。
子どもたちはカメパオに乗って♩引っ張るのは大人の仕事。KAMEの翼のメンバーと加藤さんと大見さんも一生懸命引っ張った♩
川では沢ガニ、カメ、魚・・・子どもたちはみんな川に入って生き物に夢中♩
大見さんや加藤さんはどんな感想を持ったのだろう。



夕飯は、お母さんの手作りのカレーをいただき、里が暗くなったら肝試し&宝探しへゴー!
子どもたちは、ずっとはしゃいでいる。
その頃加藤さんと大見さんはちょっと疲れていた・・・
「渋垂さんはすごいですね。タフですね。こんな事をずっと続けてきた・・・すごいわ〜」加藤さんは言った。



今年の肝試し&宝探しは、中学生のT君がサダ子?に変身。小学生の子どもたちは怖がった?・・・子どもたちは喜んだようだ。
花火して、シャボン玉して・・・夜の展覧会へ。
子どもたちの光る作品がアトリエを飾る♩そして子どもたちの絵が八ミリ映写機で動く動画となる♩





そして夜も更けて・・・蚊帳の中で就寝。
やっと子どもたちは寝た・・・でも加藤さんも大見さんも子どもたち以上に疲れたようだ。ゆっくり休もう〜ってことにはならず、朝5時には子どもたちに起こされたようだ。
一番疲れていたのは誰だろう?ひょっとして加藤さん?大見さん?
今までにない経験をした加藤さんと大見さんは、これからここに一ヶ月滞在し、どんな作品を制作されるのだろうか。
少しずつ集中し始めた加藤さん&大見さんである。



 高橋さんは、なんか子どもたちといい感じで関わっていた。高橋さんはこのアゴラにもう3年も関わっているんだもんね。

2012年7月15日日曜日

加藤さんと大見さん、徐々に準備してます。

加藤さん、大見さんが7月4、5日アゴラにやってきた。
7月28日から始まる滞在制作の下見で、今回は一晩このアゴラに泊まった。
4日夜、静岡のKAMEの翼プロジェクトのメンバーと加藤さんと大見さんをかこっての会食。
加藤さんと大見さんは、ちょっと前に石巻、女川、陸前高田へ行ったそうだ。
震災から一年以上経った被災地だったが、加藤さん、大見さんにとっては大変衝撃的だったようだ。
映像で見た石巻、女川、陸前高田が、実際自分たちの眼で見た石巻、女川、陸前高田は全然違っていた。心揺れた。そこにいる被災地の人に対して、表層だけで判断せず、個々に置かれている立場が違う事をしみじみ感じたという。
女川町の運動公園、病院、三階建ての仮設住宅を回った。
特に印象的だったのは、陸前高田だった。陸前高田は広範囲の町がすっぽりと無くなっている事だった。言葉をなくした・・そういう事を加藤さん、大見さんは話されていた。
ちょうどKAMEの翼プロジェクトのメンバーは震災一ヶ月後から石巻、女川に支援に行っている。原田君の写真展や女川の資料展もアゴラでやった。
その事に彼らは意識し、心を寄せ、動いたのだろうか・・・いろんな事を吸収して感じて思考している彼らを知った。
そうそう、この静岡メンバーの24歳の市川君も個人で5月女川へ行ったそうだ。
この眼で石巻、女川を見た。何もなかった、こんな状態になるなんて・・・と身体で感じた思いを話してくれた。今の状況でもすごい状態だと思いました・・・ほんとうにすごかったんですね・・・と市川君は言った。皆が個々に社会の出来事に意識し、引き寄せここにいるんだな〜。
そして加藤さんと大見さんはアゴラで就寝。

朝、お二人に聞いてみた。「アゴラの夜はどうでしたか?」
「はい、よく眠れました。ガサって夜音がしましたが、快適に過ごせました」と。
子どものいないアゴラに電気もともさず、加藤さんはアゴラにおいてあった手塚治虫の「MW」をコーヒーを飲みながら読んでいた。大見さんはその加藤さんに話しかけていた。
そんな感じの二人は、アゴラの空気にすーっととけ込んでいるようだった。
普段は都会の中で急ぎ足の時間の中で生活しているお二人が、ちょっと一息ついてリセットしている感じに見えた。
その後、渋垂氏と話をする。

加藤・大見「神戸にいたときも同じ共同アトリエにいた。普段生活を共にしているが、互いが違うので面白いしこんな表現をするのだと刺激になる。でも今回はここでは互いに個人個人で制作活動するので変な感じも・・・
いつもは独りで誰とも話さず作品作り・・・ここはいろんな考えの方と関わりがある。」
渋垂「島田の紙わざ大賞の時では中原浩大さんへ普通のおじさんが言いたい事を言ってきた。いろんな人が行き来した。守られすぎていては行けない。社会の中にいてその中で表現、作品を作ることをやってみましょう」 

〜〜〜 静岡県島田市で始まった紙わざ大賞(20年ほど前か・・)・・・それはこのアゴラ子ども美術工場の渋垂秀夫氏が発起人で始まった。〜〜〜  


美術手帖10(1996年)中原浩大「ちゃんとした美術の使い方」―島田のこと―より抜粋

―島田に三年間連続して行かれてましたよね。いわゆるアーティスト・イン・レジデンスっていっていいと思いますが、ちょっと通常のものとは違う気がします。あれってやっぱり大きかったですか?
中原「大きかったですよ。考えてもみなかったこともやらされている部分もあって、いろいろ発見があった。シンプルに自分のなかにあるイメージをかたちにして「作品です」って言うのでは、足りない部分がある。他人と接触しなければならないとか、逆にいかに人と接触しないで町の中にいられるかとか。結構あそこで試したのが尾を引いているという事が多いんちゃうかな。」

―いままでやったことのないことをやる環境、周りの人たちが受け止めてくれるあり方が、ちょうどよかったということですかね。新しいことをやるのがおっくうじゃない環境。
中原「そういう意味ではとても快適だった。だいたい知っている人がほとんどいないから。それまで僕のやってきた事を前提に何か言ってくる訳じゃないというのは助けになりますね。」

―ああ。なかなかそういう環境て体験できる人は少ないような気がする。
中原「そうね。企業なり町なりに関わろうという話まではまだあると思う。でも、そこと敵対してもいいやで、とか、町の中でもずっと関わるためにいなくてもいいんやで、というのはなかなかないと思うんですよ。普通そういうイベントは、仲良くする事を前提にしたり、不思議な言い方ですけれど、一般の人たちのレベルに、って言う発想がほとんどでしょう。こっちが素の状態で突っ込んでいっても構わないというような環境設定というのはなかなかないと思う。砕け散ってもかまわないとか、対立に終わっても構わないとか、みんな興味を引く必要はなくて、無視する人がいても構わへんわけやし、というレベルで設定してくれるのは稀じゃないですかね。」・・・

加藤「イレギュラー、人間的にここ(アゴラ)でどんなけ成長するのか・・・」
渋垂「おもいっきり試す事をしない若者・・・それによって何かが返ってくる事もなく自分の枠の中で作り上げて作品を出す。そうではない。
だからここで思いっきり試してみなさい!KAMEの翼はその事を支えます。」

加藤さんと大見さんは、一ヶ月後から始まるKAME翼プロジェクトに期待とその趣旨をもっと自分に引き寄せたようだった。
さてどのような作品がここで生まれるのだろうか〜。


帰り際、アゴラのあらゆる部分にカメラを向ける大見さん
加藤さんはアゴラの草花に手を添えていた。感覚?触覚?このアゴラの何かと対話してた?
植物に触れ、虫に触れ、アゴラの環境に何かを感じたお二人でした。
by terada

2012年7月5日木曜日

KAMEの翼プロジェクト始動!

中日新聞に掲載!
読売新聞に掲載!


選考された加藤元さんと大見明子さん  4/18アゴラにて


KAMEの翼プロジェクトの滞在制作の若者二人が決まった!選考は京都市立芸術大学の中原浩大氏と東京芸術大学の日比野克彦氏による。その若者は、京都芸大大学院卒の加藤元さんと東京芸大院卒の大見明子さんのお二人。その選考にあたって日比野克彦氏と中原浩大氏からの推薦された経緯をここに記載する。


大見明子さんへの日比野克彦氏からの推薦コメント
 アニメーション作家である大見さんがカメの翼でどのようなアニメーションをつくるのか?もしくは作品の発想をえるのかは大変楽しみである。
カメの翼は、なにやら不思議な時間が流れている。どこにでもある地方とはちょっと違う。都会と田舎という二極化的な色分けでは当てはまらない。ねじれているというのか、遊離しているというのか、それはまるでアニメーションの中のようだ、というと言い過ぎなので、というかそれでは世間はディズニーランドを想像してしまうので・・アニメーションの中ではなくって、アニメーションの裏木戸のカギが壊れて、パタンパタンといっている感じの場所である。そんなところで大見さんが一か月余りを過ごすと、さてさてどのような主人公が彼女の頭の中に棲み始めるのやら・・・。(日比野克彦)

加藤元さんの中原浩大氏からの推薦コメント
推薦にあたっては、少し変わったやり方をとらせていただきました。今回のようなケースには、「自然な成り行き」がとても大切だと考えたからです。
私が行なったのは、誰にとは決めないで、この辺りでつぶやいてみようかなと思いつくままに、こんな条件のこんな話があるけど気になったら実際に行ってみるかい?ということをやんわりと伝えるということです。私の行動範囲はごく限られています。ですからごく偏った伝わり方をしていったと思います。公募というような公平なものとはほど遠いやり方です。そして、推薦の結論としては、名乗りを上げた者勝ち、既成事実化した者勝ちにしようと考えました。推薦というにはあまりに無責任な放り出し方だと思います。結局、私がしたことのすべては、つぶやくときの「この辺り」を勘を働かせて決めることだけでした。
私の話を聞いた何人かは、反応することもなくそこで聞き流したでしょう。何人かは反応して実際にアゴラに出かけてみたでしょう。何人かは反応してその話を別な誰かにしたでしょう。そして、その話を聞いた何人かは反応して行動に移したでしょう。
実際にアゴラを訪れてみて、ある人は何も感じることなく通り過ぎたでしょう。ある人は兆しを見つけるかもしれません。ある人はもやもやとしたまま何度となく足を運んでみるかもしれません。そして、「自然な成り行き」で、誰かが名乗りを上げるだろうと期待していました。それが兆しを見つけた人でもいいし、まだ何も見つからないままに何度も足を運んだ人でもいい。加藤さん(夫妻)が立っているのは、そういう地点だと思います。   
加藤さんが、興味を抱いたという事実、それを行動に移したという事実、名乗りを上げたという事実、それらが、改めて語るまでもなく彼の人となりや意志を表明していると考えます。でも、ひょっとして、こうしている間にも別な誰かが彼ら以上に「自然な成り行き」で居場所を見つけて、事実上の立場が入れ替わってしまうかもしれないとすれば、それもありなんじゃないでしょうか。    (中原浩大)

  加藤元  
1975年兵庫県生まれ  2009年京都市立芸術大学大学院 美術研究科彫刻専攻 修了
アゴラとの出会いは昨年プレイベントに参加していた大塚さんがきっかけでした。
彼女から色々と話を聞いた上で「一度この目で見てみよう」と思いました。昨年十二月、初めてアゴラを訪ねました。渋垂さんからアゴラについての話を聞きアゴラを見学するなかで、複雑な高揚感を感じたのを覚えています。ここに集う子供達や大人達とのかかわり合いの中で感じることや、普段生活している住み慣れた環境ではなく、勝手の知らない少し不便な環境のなかでどう反応出来るかを楽しみたいと思います。一ヶ月、アゴラでの生活の成り行きに身を委ね、自分の直感に従いたいと思います。 (加藤元)
大見明子
1977年 奈良県生まれ
2010年 東京藝術大学大学院 映像研究科アニメーション専攻 修了
アゴラには去年の十二月に初めて行きました。訪れると子供たちが居て、なにやらああだこうだ言いながら、無邪気に何かを作っています。ルールは無く、子供たちが作ってみたい、試してみたいと思うものを時間をかけて思い切り作るのだと渋垂さんはおっしゃいました。私のこれまでの作品制作は、決まった機材と決まった手法、決まった場所でのみ作ってきました。生活の場所を変えて作品を作ることでどうなるのか、今の自分にはまったくわかりません。だけど、今までの少ない経験とか考えは一旦脇に置いといて、自分に何ができるのか考え始めています。緊張して固くなってしまった身体をほぐすように、ここアゴラでは思いついたこと、感じたこと、やってみたいと思うことを、ただただ素直に試してみたいと思っています。(大見明子)

 カメの翼プロジェクトが動く!       
 加藤さんと大見さんは、また四月十八・十九日にアゴラ子ども美術工場にやってきた。そして今回の滞在制作に向けて、積極的にアゴラ周辺の様子を取材した。お二人は、夏に向けて想像を膨らませたことだろう。
 この選考にあたって、情報を得た何人かの若者は、このアゴラにやってきて、表現する場所を得たいと思った事だろう。その中で、加藤さんや大見さんが選ばれた事、それは、彼らの積極性かもしれない。彼らは、二十代、それぞれがイギリスで表現を学んだそうだ。そして異国の土地で何かを感じ、その後偶然二人は、神戸にあるCAPという場所に行き来する。「芸術と計画会議」いろんな意識ある芸術家が集まり、話し合う。そんな場所で、それぞれが自分たちの表現と社会の中での存在を試行錯誤していたのだろう。そしてこのKAMEの翼プロジェクトを知り、行動する。四月に来た加藤さん、大見さんは、アゴラの子どもたちへ興味を示し、アゴラがある里山に興奮した。草にいた虫に興味津々だった大見さんやお茶畑を見ておもむろにカメラを向ける加藤さんの様子を見て、彼らはこの里山の息づいている空気をちゃんと感じているんだと思った。何より、彼らがこれから始まる事に対してワクワクしていると言った言葉に、私たちもちゃんと支えようと言う意思を持った訳である。


4月19日アゴラ近隣取材の二人とアゴラの渋垂先生

by terada