2018年2月5日月曜日

後期展開催です!

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好評につき、展覧会ロングラン。
大寒の最中にアゴラでは、発起人の渋垂秀夫氏と丸山孝広氏の展覧会を開催しておりました。
雪の降る滋賀からわざわざ来てくださっり、帰宅時雪に見舞われた東京の人、版画で有名な方、編集者、本屋さん、、画廊の方、そしてアゴラの親御さんがいっぱい来てくださいました。
特に注目は、日頃好奇心の塊の子供達が、触りたくなる先生の作品をじっと息を殺し見ていた事。
先生の作品展が今日からだっていつもより早くアゴラに来て、じっと見ていた小2のYちゃんの姿には、感動でした。
かっこいい!おしゃれ!いいね〜。不思議・・・などなどいっぱい声を頂きました。
二階の丸山さんの作品もあ!知ってるってな意見もあり、いろんな思いで見てくださっていました。
ありがとうございます。
ところで・・・
この展覧会が開催された1月22日は渋垂氏の誕生日でした。
そして・・・
『ゲド戦記』作者・アーシュラ・K・ル・グウィンさんが亡くなった日でした。
アゴラでは昨年『ゲド戦記』翻訳家の清水真砂子さんを演者にお招きし二度の講演をして頂きました。
清水さんの講演は、お母さんたち女性に大変反響がよく、自立する女性像に、希望を感じたと思います。
清水さんは『ゲド戦記』と、出会った時、これを訳さないと後悔すると思ったそうです。
それで高校教師を辞め、『ゲド戦記』の翻訳に取り組まれます。
翻訳するにあたり、彼女は作者・ル・グウィンさんの表現される情景をもっとリアルに感じたく、二巻に登場するテナーが閉じ込められていた城のイメージを中南米の遺跡に抱き、その場所を訪れ、そのレンガの階段を実際歩いて息の切れ具合を感じたり、翻訳するのに、ル・グウィンさんの言葉により近い日本語を探したんだそうです。
ただ知っている文字を変換するのではなく、身体で感じて表現した『ゲド戦記』だったそうです。
清水さんはル・グウィンさんとも親しくされていたそうです。
ル・グウィンさんの家には無造作にトロフイーが転がっていたそうで、そう言う賞状等邪魔なの・・・って言っていたそうで、その雰囲気を清水さんは面白く話されていました。
『ゲド戦記』を読み進めると、2巻、4巻は特に女性にとって共感できるお話で、その内容を一つ一つ感じると、これは日頃のル・グウィンさんの社会に対する意識なんだと私は思います。
また清水さんは、二巻をこれはすごい恋愛小説だと言われました。
そして清水さんの自叙伝『青春の終わった日』を読むと清水さんと『ゲド戦記』の二巻を妙に重ねてしまうのです。
つまり、ル・グウィンさんはたぶんゲド戦記の中に自分の意識を投映し、清水さんは『ゲド戦記』の中に彼女が登場していたのかもしれないと思いました。
ル・グウィンさんが亡くなったとお聞きしたのは、この展覧会に戸田書店の店長さんとかつての戸田書店の書籍仕入部長の方が来られ、偶然にも「ル・グウィンさんが1月22日に亡くなったよ」と知らせて頂いたからです。
さすが、本の事を知り尽くした方々だと思いました。
清水さんはきっといろんな思いでいらっしゃるのだろうと・・・
一つの歴史が終わったのか、伝え引き継ぐのか・・・
ル・グウィンさんの作品はも言う新たに生み出される事はありません。
でも海の向こうの彼女の本を私たち日本人が知る事ができるのは、翻訳家・清水真砂子さんがいらしたからこそです。
そしてル・グウィンさんの深い言葉表現にできるだけ近づいて訳してくださったから、私たちは、より『ゲド戦記』から様々な思いを読み取る事ができるのだと思います。
そんな思いに同調し、渋垂氏は、照明を暗くし、貝化石のかけらの上にアゴラのバラを添えました。
―追憶ー
喪に伏して、敬意を称して・・・
すると、次の朝、貝化石の上のバラが消えていました。
?え?・・・誰かきた?
わからない・・・ネズミ?・・・風のせい?・・・
消えた手向けたバラ・・・
最終日、先生は保育園の方が持ってきてくださった花束の中の一輪のオレンジのバラを貝化石のかけらの上に手向けました。
色づいたバラ。
新たに始まる、生命の循環。
分解からまた始まる。
私たち
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昨日は走る本屋さん・高久書店がアゴラに来ました。
何人かアゴラの親御さんも来てくださっていたのですが、写真を撮りにいくのを忘れて・・・
副店長さんがアゴラが好きで、アゴラの制作に夢中になっていましたもので・・・
かわいい副店長さんは、ノコギリで木を切って、弟にってかわいい車を作って帰りました。
高久書店も走り出してちょうど一年でしょうか・・・
思いがあって、形になって、続けること・・・
その連続に人々の意識に今日もあるって当たり前になっていくのだなって思います。
思いが思いを繋ぎ、広がり、新たな出会いを持ち込みます。
『ゲド戦記』作者アーシュラ・K・ル・グウィンの訃報もここから頂きました。
大事なもの、大事な事を伝えるのは、テレビ、新聞、雑誌等だけでない。
本当に大事なものは何かを個人個人が意識し、それが大事な事だと大事に丁寧に伝えられる。
これからの情報は、そういう関係性の中につながりを持たせ、運ばれるものだと感じます。
本も情報もありがとうございました。

2018年1月31日水曜日

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只今、アゴラでは、渋垂秀夫&丸山孝広展開催中です。
渋垂秀夫氏の個展は10年ぶりです。
渋垂氏の個展『分解 decomposition 』。
彼の作品には一連のテーマがあります。それが循環です。
循環を意識する。
水があり、流れがあり、植物があり、自然があり、人がいて、生きるとは・・・逝くとは・・・全てが循環。
以前の作品展『compotion』から、今『分解 decompotion』へ
なぜ 分解なのか・・・
私たちは循環の中に生きています。
そして当たり前に今ここにあると思っています。
けれど、この当たり前の中に私たちは委ね、これを当たり前に享受して生きてきたように思います。
その享受してきた事は、何処からはじまり続いてきたのか・・・
教えられ、与えられ、この流れが、当たり前で、疑いも無く繰り返された。
けれど、何か違っていた・・・
何が違うのか?
それを感じる時、概念そのものが違っていたのかもしれない。
歴史学者であり、思想家の藤原辰史氏は、月刊誌「現代思想」の中で、生態学の言葉を分解しました。
生態学は、私たちの一番核となる生き物としての進化や存在を学問として私たちに伝えます。
私たちはどんな存在なのか?生き物はいったい何なのか?
その学問の中において私たちは、生き物を意識し、生き物たちをふるい分けして、自分達の位置を確かめました。
藤原氏は、今の社会の違和感を生態学の言葉に意識し、この生態学分野で使われる言葉の概念に着目し、分解しました。
分解する事で何が見えたか・・・
言葉とは、私たちに様々な意識の固定をするものだと私は理解します。
その藤原氏の意識は、今までの戦争史や農業史の歴史学者を超え、新しい分野に注がれました。
それに連動したように、渋垂氏は、自らの作品展を振り返り、新たな試み。
世界中の子どもが例外無く描く、頭足人。円の獲得から頭足人。
子どもは、身体で円を描き、その次に足が、その次に手が・・・そして頭足人を描くのです。
渋垂氏は今回の作品展では500枚の素描画を描きました。
子どものように身体で描く、感覚で描く、力を抜いて自由に描く事を試みました。
その作品をアゴラの教室に並べ、分解の文字を添えました。
目の前には彼の不思議な大きな絵が、アゴラの教室を見渡します。
水で描く彼の技法。
鳥なのか?人なのか?山なのか?虫なのか?何なのか???
でも面白いこの絵って何?
想像してご覧。創造してご覧。
イマジンが流れてきそう♪
もっと自由に、もっと力を抜いて、面白く、生きようと言っているように思いました。
美術がいらない教育になるとは、どんな社会になるのかを創造した事がありますか?
固く、凝り固まり、文字が乱舞し、規則ができる。正しいという概念を権力が与えるのです。
美術教育の縮小は、そうぞうの希薄・・・そうぞうの欠落・・・固く、凝り固まった窮屈さに閉じ込められる。
これに、NOっしたらいいんだって、わたしたちはもっと自由に生きられる。もっと素直に生きられる存在なんだよって教えているような感じがしました。
感じる作品作ってみろよって先生は若者にずっと訴えてきました。
感じる作品が今ここにあります。

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今回の作者。左・丸山孝広氏と右・渋垂秀夫氏
下の写真は、渋垂氏の作品制作風景です。
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二階は、イラストレーターの丸山孝広氏のデジタルアート作品と写真の展示です。
丸山さんの作品を見たとき、どっかで見た事あるな〜って感じませんか?
彼の作品は良く様々な雑誌や本の挿絵になっています。
昔は手書きで描かれていたイラストですが、パソコンが生まれてから、今やデジタルアートの時代になってしまいました。
彼は、手書きから、デジタルワークもこなすイラストレーター。
作品は商品となり、個展云々という世界より、細かな作業の中にアーティストとして生きてこられました。
この作業は、大変身体を酷使するのですが・・・
つまり、パソコンと肉眼の距離は10センチの世界で小さなドットとのにらめっこ。
デジタル処理の複雑さはなかなか素人には伝わらないものですが、大変苦労のいる作業なのです。
この作業は、目を酷使したり、云々・・・
そう言う方々の労あって、私たちは日常のものを手ににて楽しんでいる訳です。
そういう仕事の傍ら、アゴラのキャンプに10年通ってくださって、木琴おじさんとして子供達と関わりを持ってくださっています。
モノクロ写真は、彼のまなざし。
なぜモノクロですか?
できるだけ余分なものは消したいの。このシンプルなところに、それぞれ色を感じて付け加えたらいいと思っていると丸山さんは言いました。
子供達の良い笑顔がたまらない。
おばちゃん先生の息子たちの写真もありました。
あのおどけない表情をしていたんだな〜と、子どもの純朴な表情に成人した息子を重ね、先生たちの寄り添って頂いた時間経過を噛み締めました。
他にもアゴラで行った「KAMEの翼プロジェクト」のチラシや講演会、リーフレット等のデザインワークをやってくださった丸山さん。その作品も展示しております。
是非お越し下さい。
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2018年1月7日日曜日

展覧会のお知らせです!

”decomposition ―分解ー” 渋垂秀夫

“アゴラ子ども美術工場と
KAMEの翼プロジェクト関連のデザインワーク“ ー丸山孝広ー






日時:2018・1/22(月)〜2/4(日)11:00〜19:00

場所:アゴラ子ども美術工場・ギャラリー
    静岡県掛川市千羽1679 ☎0537-27-1428   090-6351-6633



あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。
アゴラは今月22日〜2月4日まで展覧会を開催します。
アゴラの発起人・渋垂秀夫先生と、先生の大学時代からの友人でイラストレーターの丸山孝広さんの展覧会です。
彼等が大学生だった時は、教育が産学共同へ移行しようとした頃です。つまり学生運動の時代。
学生運動は、あの頃の学生が、純粋な教育体制から産業に結びつく教育体制に持って行こうとした大学側へ抗議しての運動でした。
これは、本当に大事な運動でした。
学生たちは声を上げて、身体を張って阻止しましたが、教育体制は次に来る高度経済成長の渦の中に潜り込んで、産学共同教育へ移行しました。
今、子供達の親世代が、沖縄や、日米安全保障条約、あの当時の学生運動や抗議行動の内容等大事な事を知らないのは・・・
自分を持てず、競争に向かっていく意識や、場の空気を読んでしまうのは、なぜか?
これが産学共同時代の教育とそれまでの教育の違いなのだと思います。

そして世の中は、あの頃にと戻ろうとする空気を持ちはじめます。
安倍政権は2015年、集団的自衛権を国会で強引に通して、その前から武器輸出を行い、フランスで行われた武器展示会・ユーロサトリで日本の企業も12社参加しました。それから企業は毎年この会に参加しています。また、安倍政権は教育予算を削減し、軍事研究に加担する大学や部署に教育予算をつけるとしました。
これらの事は当然憲法に違反する行為です。が、強引に戦争をする国を肯定し、教育に軍産複合体体制を入れこんでいます。
これに対して、各大学の教師や有識者と学者たちは、この産学軍教育に反対し、いろいろな集会を開いています。
昨年10月に京大総長の山際寿一さんが、学術会議の会長に就任しました。これからいい空気が広がっていきますようにと思います。

あの時代を生き、教育、子育て、…子どもとは何かを思考し、関わってきた先生方の表現が今時を経て、ここに生まれます。

”decomposition ―分解ー” 渋垂秀夫

“アゴラ子ども美術工場とKAMEの翼プロジェクト関連のデザインワーク“ ー丸山孝広ー

アゴラにお越し下さい!